それでも、愛する方が 鍵を開けようとするのを見て気の毒になり、 私は跳び起きて、ドアを開けました。 かんぬきの取っ手を引いたとき、 私の手から香水が、指からかぐわしい没薬の液が したたり落ちました。 ところが、せっかくお開けしたのに、 もうあの方の姿は見えません。 私は心臓の止まる思いでした。 どんなにあちこち捜しても、 あの方は見当たらないのです。 必死にお呼びしても返事はありません。 私は警備の人に見つかり、たたかれました。 城壁の見張りにはベールをはぎ取られました。 エルサレムの娘さん、どうか誓ってください。 私の愛する方を見かけたら、 私が恋の病をわずらっていると伝えてほしいのです。」 「 女性の中で一番美しい人よ。 私たちにそれほどまでに頼み込む だれよりもすてきな人とはどんなお方ですか。」 「 私の愛する方は日焼けして魅力的で、 ほかのどの男の方よりすてきです。 頭は純金、 黒い髪はウェーブがかかっています。 目は流れのほとりにいる鳩のようで、 穏やかに輝き、深く澄んでいます。 頬はかぐわしい香料の花壇、 くちびるはゆりの花、息は没薬のようです。 腕はトパーズをはめ込んだ丸い金の棒。 体は宝石をちりばめた光沢のある象牙。 足は純金の台座にすえられた大理石のようで、 レバノン杉のようにたくましいのです。 あの方にまさる人はいません。 あの方のことばは、うっとりするほどです。 あの方のすべてがすてきなのです。 エルサレムの娘さん。 これが私の愛する方、私の恋人です。」
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