マルコ筆・福音書 2

2
屋根をつきぬける友の信仰
(マタイ 9:1-8; ルカ 5:17-26)
1数日後――
ガリラヤ地方を回ってきたイエスがガリラヤ湖沿いの町、カペナウムへ戻って来た。
――「戻って来たらしぃぞ・・・!!」
「ほんとか!!」
「あんたー、いえっつぁんが戻って来たってよぉ—!」
その噂は電光石火のごとく町中へ広まった。
2イエスの話を聞こうと人がドドドっと集まってくる。そこでイエスは、ある家に入って教え始めると、あっと言う間に人であふれかえった。外もズラーッと人だかり。
3――「はぁはぁ・・・あ、あそこだッ!」
「もうすぐでよくなれっぞッ!」
そこへ、息を切らしてやって来たのは4人の男たちであった。いーや、彼らが担いでいる男を入れると5人になる。担がれている男は、身体からだ麻痺まひしており、動けなかったのであった。
4「すいません!動けない友達がいるんです、通してくださいッ!!」
「頼む!通してくれッ!!!」
「・・・・・・ク、クソォ!こんなに人がいちゃあ、どうやっても入れねぇ」
「絶対に治してやっからな・・・!」
あまりの人だかりで、入り口に近寄ることすらできない・・・。
「ち、ちくしょう・・・こーなったら!」
――よーいしょ!よし、そおっとだ。
何を思い立ったのか、彼らは屋根に登ると、今度は他人の家の天井をはぎ始めるではないか!
「お、おい上を見てみろッ!」
中にいた人たちは、イエスの頭上を見た。ガサガサしているかと思えば、男たちが屋根をせっせとはいでいる・・・。
「な、なんてことしてんだ!!」
麻痺まひして動けない友達がいるんです!!」
「先生!今から下ろしますんで、どうか治してやってくださいッ!!」
すると、麻痺まひした友人を布団ふとんに載せたまま、ひもでそっとイエスのもとへ吊り下ろした。
5イエスは屋根の上にいる4人組が「イエスに診せれば治る」と確信したがゆえにとった行動だと見た。それから横たわっている男に発した。
「イスラエル国の子よ、あなたの過ちはゆるされた・・・!」
6そこに数人いた掟の学者は思った―― 7(な!なんてバチ当たりな・・・!過ちをゆるせるのは神様のみぞ・・・)
8「なんだ?」
イエスはその思いを察した。
9「目には見えないし、言うのは簡単だなんて思ってるのか?なら、この動けない男に立って布団ふとんをたたみ、歩けと言って、なーにもかも起きたらどうだ?
10それを目にして俺、つまり“この人”が、この世で過ちをゆるす権力がないなんて言えまい・・・!」
イエスは全身麻痺まひした男を見た。
11「さあ立ちあがれ!布団ふとんをたたんで家へ帰るんだ!」
12すると男がバッと立ち上がるではないか!あごが外れそうになっている人たちの前で、全身麻痺まひの男が布団ふとんを持って出て行った・・・。
・・・・・・ウ、ウォォォ・・・!バ、バンザーイ!バンザーイ!!バンザーーイ!!!
そこにいた人たちは驚愕きょうがくして、神を讃え始めた。
「こ、こんなことってあんのかよ・・・!!!」
ゴロツキとつく食卓
(マタイ 9:9-13; ルカ 5:27-32)
13イエスが向かうところは、人、人、人!イエスがガリラヤ湖に向かっている途中、いつものように人が集まって来たので、神についてさまざまなことを教えた。
14その後――
イエスは、ガリラヤ湖のほとりを歩いていた。すると、アルパヨの息子であるレビを見つけた。
ーーアルパヨの息子・レビーー
レビは机を並べ、イスに座って商売をしている。税金取りだ。
――「俺について来い!」
バタンッ・・・
税金取りのレビは即座に何もかも置いてイエスの後について行った!
15その日の午後――
イエスは仲間たちと一緒に税金取りを先ほど辞めたレビ宅にいた。レビのほかにも多くの税金取りや、評判の悪い人たちがイエスについていく決断をし、食事を共にしていたのだ。
16イエスがそんな人たちと一緒に食事をしているという噂が広まり、パリサイ一派の掟の学者たちがやって来た――
「きみ、なぜ彼はこのようなゴロツキたちと食卓を共にしているのですか?」
17イエスの一味に尋ねた声は、イエスの耳にまで届いた。
「いいか、医者は病人のためにいる。健康な人には必要ない。俺も同じく、正しい人のためではなく、“過ちを犯した人”を招くために来た・・・!!!」
イエスが直々じきじきに掟の学者の問いに答えた。
まじわらない古きとあらた
(マタイ 9:14-17; ルカ 5:33-39)
18洗礼者バプティストヨハネやパリサイ一派の弟子たちは断食だんじきしておりますが、あなたの弟子はなぜ、断食だんじきしないのですか?」
この頃、洗礼者バプティストヨハネとパリサイ一派の弟子たちは、断食だんじきをしていたが、イエスの仲間たちはしなかった―― 【ユダヤ人は、熱心に神を求める名目で断食だんじきをたまに行っていたのだ】
19この問いにイエスは、3つの例えを用いて答えた。
花婿はなむこを祝う結婚式に招待された客がこんなめでたい時に断食だんじきをすることなんてないだろう。
20 花婿はなむこと共にいるんだ。断食だんじきをする必要はない。だが、花婿はなむこが彼らのもとから離れる時が来る・・・!その時になれば、彼らも断食だんじきするよ。
21古着のつぎあてに、新しいぬのを使う人はいない。そんなことをしたら、つぎあてた新しいぬのが縮んで古着が破れてしまう!
22また、新しいワインを古いかわ袋に入れる人もいない。そんなことをしたら、古いかわ袋は新しいワインの発酵はっこうに耐え切れずに破れ、かわ袋と一緒にワインまでダメになってしまう。新しいワインは、新しいかわ袋に入れるのが、お決まりじゃあないか!」
休日サバスの主
(マタイ 12:1-8; ルカ 6:1-5)
23ある休日サバスのこと――
イエスが一味と麦畑の中を歩いていると、一味の中に麦のって食べていた者たちがいた。
24コラッ!
それはパリサイ一派の目に入った・・・
「イエス先生、あなたの弟子ですが、麦のを摘んでおりますよ。本日は、休日サバスであることはご存知?立派な掟違反じゃございませんか!」
25「聖書を読んでいるなら知っているだろうが、ダビデとその仲間たちの食糧がつきて、お腹が減ったとき、ダビデが何をしたか覚えているか?
26アビヤタルが大祭司だったころ、ダビデは神殿に行き、神に捧げられているパンを食べた・・・。掟だと、捧げものを食べることができるのは祭司だけだったにもかかわらずだ。さらにダビデは、捧げものであるパンを仲間たちにも分け与えたじゃあないか!
27 休日サバスは、人を助けるために創られたものであって、人が休日サバスのために創られたわけじゃあない・・・
28よって、“この人”は休日サバスぬしだ」

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