エステル記(ギリシア語) D

D
エステル、王の前に出る
1[1] 三日目になって、エステルは祈りを終え、礼拝用の衣を脱いで、晴れ着を身にまとった。 1a[2] 輝くばかりに装ったエステルは、すべてを見守る救い主なる神の加護を求め、二人の女官を招き、[3] その一人に優雅にそっと寄りかかり、[4] もう一人に衣のすそを持たせて後に従わせた。 1b[5] 頬を紅に染めた彼女は、たとえようもなく美しく、その顔には愛らしい笑みをたたえていたが、心は恐怖のためにおびえていた。
1c[6] エステルは王宮の扉を次々と通り抜け、王の前に立った。王は玉座に座り、きらびやかに正装し、黄金と宝石で身を飾っていた。王はことのほか厳しい様子であった。 1d[7] 威厳に満ちた顔を上げ、激しい怒りのまなざしでエステルを見据えた。王妃はよろめき、血の気がうせて顔色が変わり、前を歩んでいた女官の肩に倒れかかった。 1e[8] ところが神は、王の気持を変えて柔和にされた。王は心配して玉座を飛び出して、王妃を腕に抱いた。やがて彼女が気を取り戻すと、優しい言葉をかけて慰めた。 1f[9] 王は言った。「エステルよ、どうかしたのか。わたしはお前の兄弟だ。安心するがよい。 2[10] お前を死なせはしない。予の命令は一般の民に向けられたものだ。[11] こちらに来なさい。」[12] そこで王は黄金の笏を取って、王妃の首に当てた。そして彼女を抱擁して言った。「わたしに話すがよい。」 2a[13] エステルは王に言った。「主よ、あなたは神の御使いのように、私には思われました。あなたの栄光に恐れを抱き、私は心を取り乱しました。 [14] 主よ、あなたは驚くべきお方です。御顔は恵みに満ちています。」 2b[15] こう話しているうちに、王妃は血の気がうせて倒れた。 [16] 王は戸惑い、従者は皆でエステルを元気づけた。

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