ヨハネ筆・福音書 7

7
仮庵祭かりいおさい祭りとイエスと兄弟
1このあと、イエスはガリラヤ地方の村から村へとまわった。
イエス暗殺を企てるユダヤ人指導者たちを懸念し、ユダヤ地方は避けた。
2ユダヤ人の伝統的な祭りの1つ、仮庵祭かりいおさいが近づいていた―― 【ユダヤ教三大祭の一つ。ユダヤ人の祖先がエジプトを脱出したとき、荒野に幕屋テントをはって住んでいたことを記念し、仮設の家を建てて泊まり、お祭りした】
3そこで、イエスの弟たちが持ちかけてきた。
「はやくユダヤ地方のお祭りに行って、そこにいる兄貴の生徒にキセキを見せたらどうだい。
4有名になりたいなら、こんな隠居なところでやっててどうすんだ。
兄貴がそんなに偉くてすごいんだったら、世界に見せつけたらいいじゃないか!!」
5こう押しつけがましく言うのも、弟たちでさえイエスを信じていなかったからだ。
6「まだ俺の時じゃあないが、おまえたちはいつ行ったって平気さ!
7人の悪行を指摘するから俺は世に憎まれる。だがおまえたちに憎まれる要素はない。
8行って楽しんでこい!俺は行かない・・・『俺の時』が来てないからな」
9そう言うとイエスはしばらくガリラヤ地方に残った。
10イエスの弟たちが祭りに向かったあと、イエスも祭りに行ったが、誰にもばれないように参加していた。
11「“あの男”はどこですか・・・?」
イエスを血眼になって探すユダヤ指導者たち。
12祭りには、人が山のように集まり、陰でこそこそとだが、どこもイエスの噂で持ちきりだった。
「彼は聖い方です」
という声もあれば、
「いいや、みんな騙されているだけだ」
という声もあった。
13しかし、ユダヤ指導者たちを恐れ、誰も表立ってうわさする勇気はなかった。
掟を守る?休日サバスの活動は?
14祭りも半ば折り返したころだった――
イエスは神殿付近でおおやけに教え始めた―― 【祭りは全部で7日間】
15ユダヤ指導者は目を見開いた。
「な、なんと!我々のような英才教育を受けていないというのにどうやってここまでの知識を身につけたのでしょう・・・」
16「私を遣わした神の教えであり、自分で考え出したわけではありません。
17神が望むとおりに生きたいと願う人は、この教えが私からではなく、神からきていると分かる。
18自分の意見を見せびらかすなら、褒められたい一心でしかありません。
だが、私を遣わした神の教えに称賛を集めるなら、その人の教えにうそはなく、信頼ができます。
19モーセに掟を与えられたんじゃあないんですか?
なぜ掟を破る?守っていると言うなら、なぜ私を殺そうとする?」
20「悪魔に犯されましたか!誰もあなたを殺そうだなんて思っていませんが!」
群衆は強く反応した。
21「私が休日サバスにひとつ、
キセキを起こすとみんな目の色を変えてましたよ。
22それにも関わらず、モーセに与えられた掟のひとつ、
割礼かつれい休日サバスに施していますね。
では、必要に応じて掟を破っているのはあなたがたです。
休日サバスなのによく赤ん坊に割礼かつれいしているではないか。
――割礼かつれいは、モーセの先祖から始まったものである――
23それなら割礼かつれいという掟を守るためなら、休日サバスだって関係ないことになる。ではなぜ、私が休日サバスに人の身体を治したことに腹を立てる?
24客観的に判断するのはやめなさい。
本当に正しいのは何か、を基準に判断するんだ」
救世主キリストの身元は分からないはず?
25神殿のみやこエルサレムの住民が口にしていた――
「あれは、ユダヤ指導者が殺そうとしている男だ。
26でもなぜ、公衆の面前で教えているというのに、放っているんだろう。
もしかしたら、指導者たちも彼が本当に救世主キリストだと認めたんじゃあないのか。
27だけどさ、本当の救世主キリストはどこから来るかわからないんだぜ。俺たちは彼の身元を知ってるじゃないか」
28そこで、神殿で教えていたイエスは大声をあげた――
「そうだ!!あなたがたは私の生まれも、育ちも知っている気でしょう!!だが、私を遣わした方の意志で、私はここに来た!!そして、私を遣わした方についてあなたがたはなにも分かっていません!!
私は彼に送られ遣わされました!!!
29私は彼の元から来たからこそ、彼を知っているのです!!!」
30これを聞いた人たちは、頭に血が上り、イエスを捕まえようとした。
だが、だれも指一本触れることができなかった。まだ、神の計画の時ではなかったからだ。
31そんなこともありながら、より多くの人がイエスが救世主キリストだと信じ、こう言った――
「ありえない、本当に救世主キリストが、この方より多くのキセキを行うと思うか?」―― 【イエスが救世主キリストで間違いないと言っていたのだ】
逮捕!いや、逮捕される時ではない?
32「なに?民衆が?」
この情報がパリサイ派の耳に入った。
祭司とパリサイ派は、イエスを逮捕すべく、神殿警察官を送り出した。
33ところがその人たちに対しイエスは――
「まだです。いずれ私を遣わした方のもとへ戻りますが、もうしばらくはあなたがたといる予定です。 34その時、あなたがたは私を捜しますが、見つけることができません。また、私のいる所に来ることもできません」
35このことばに、ユダヤ指導者たちはすっかり面食らいました――
「この男は、いったいどこへ行くつもりでしょう。ユダヤ人が住む、外国にでも雲隠れするのでしょうか。ひょっとして外国人さえ教えるつもりでは。
36彼いわく、『私を捜すことになるが、見つけることができない』
また、『私のいるところに来ることはできない』ですって。何を意味しているのでしょう?」
イエスから飲む生きた水
37 仮庵祭かりいおさいで最も大切な最終日――
イエスは立ち上がり、祭りにぎわっている民衆に大声で大胆に語りかけた――
「だれでも、のどが渇いているなら、私のところへ来て飲みなさい!!!
38聖書にあるとおり、誰でも私を信じるなら、心から生きた水が川のように流れでる!!!」
39イエスは神の霊ホーリースピリットのことを言ったのだ。神の霊ホーリースピリットは、イエスを信じる人すべてに与えられることになっていたが、この時はまだだった。イエスがまだ、天にある栄光の座に戻っていなかったからだ。しかし、イエスを信じていた人は神の霊ホーリースピリットを受けることを意味していたのだ。
イエスについて別れる意見!
40イエスのことばを聞いた人は――
「この人は、本当に預言者だ!!!」
41ある人は――
「この人こそ救世主キリストだ!」
その他は――
「ガリラヤ地方から救世主キリストは現れないよ」
42「聖書には、救世主キリストがダビデの子孫で、ベツレヘム町から誕生するってあるからな」
43こんなぐあいに、イエスについてあーでもなければこーでもないと意見がわかれた。
44中には、逮捕したいと思う者さえいたが、手を出すまでには至らなかった。
「信じるものか!」かたくななユダヤ人
45神殿警察官は祭司とパリサイ派のもとにもどった――
「なぜイエスを連れてこなかったのですかっ!」
46「あれほどまでに素晴らしいことを言う人に会ったことがありません!」
47「あなたたちまで騙されたのですか!
48われわれユダヤ指導者やパリサイ派の中で、あいつを救世主キリストだと信じている者が、1人でもいますか?
49そりゃあ、無知な連中は頭から信じきってるかもしれませんがね。
あの民衆に掟の何がわかるのですか。バチあたり者めが!」
50しかし、そこには、あのニコデモの姿が!そう、夜ひそかにイエスを訪ねたユダヤ指導者だ―― 【ニコデモはパリサイ派であった。聖書:ヨハネ3:1-21を参照】
51「おことばですが、事情聴取と取り調べも行わずに有罪だと決めるのは、合法的ではありませんな」
52「さては、あなたもガリラヤ地方出身ですか!聖書をしっかり読みなさい!ガリラヤ地方からモーセのような預言者は生まれません!!!」―― 【聖書:申命記18:15より引用】
53こうして、一同は散会し、めいめい家に帰ったのだった。

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