サムエル記Ⅰ 9:1-21

サムエル記Ⅰ 9:1-21 JCB

ベニヤミン人に、キシュという裕福な有力者がいました。その人の父親はアビエル、アビエルの父はツェロル、ツェロルの父はベコラテ、ベコラテの父はアフィアハでした。 キシュの息子サウルは国中で一番の美青年で、しかも、だれよりも頭一つ高い長身でした。 ある日、キシュのろばがいなくなってしまいました。そこでキシュは、サウルに若者を一人つけて捜しにやったのです。 二人はエフライムの山地、シャリシャ地方、シャアリム地域、それからベニヤミンの全地をくまなく捜し回りました。しかし、ついにろばは見つかりません。 ツフの地まで捜したあと、サウルは召使の若者に言いました。「もう帰ろう。こうなったら、父はろばより、おれたちのことを心配するよ。」 「若だんな様、名案があります。この町には神の人がおいでです。だれからも厚い尊敬を集めている方で、その人の言うことはぴたりと当たるそうです。今から、お訪ねしてみましょう。ろばがどこにいるか、きっと教えてくださいますよ。」 「それにしても、みやげの品が何もないな。食べ物も尽きたし、何を贈ったらいいだろう。」 「心配はいりません。私が少しばかりお金を持っています。それを差し上げて、ご指示を仰いではいかがでしょう。」 「よし、そうしよう。」 話がまとまり、二人は預言者の住む町へ向かいました。町へ通じる坂道を上ると、水くみに来た若い娘たちに出会いました。そこで、「この町に先見者がおられますか」と尋ねました。当時、預言者は先見者と呼ばれていたのです。 「ええ。この道をちょっと行った所にいらっしゃいます。町の門のすぐ内側です。ちょうど旅からお戻りになったところで、人々のために丘の上でいけにえをささげに行こうとしておられます。さあ、お急ぎになったほうがいいわ。せっかくお訪ねになっても、丘へ行かれたあとではしかたありませんもの。あの方がおいでになって、いけにえを祝福されたあとでないと、客人は食事ができませんから。」 二人は町へ急ぎ、門にさしかかった時、丘に上ろうとやって来たサムエルに出会いました。 主はその前日、サムエルにこう告げていました。 「明日の今ごろ、ベニヤミン出身の者をあなたのもとに遣わそう。その者に油を注いで、わたしの民の上に立つ者としなさい。彼はイスラエルをペリシテ人から救い出すだろう。わたしが民を顧みてあわれに思い、その叫びを聞いたからだ。」 サムエルがサウルをひと目見た時、「これが、あなたに告げた若者だ。イスラエルを治めるべき者だ」と主の声が聞こえました。 サウルはサムエルに近づいて、「先見者のお宅はどちらでしょうか」と尋ねました。 「私がそうだよ。さあ、先に立って、あの丘に上りなさい。いっしょに食事をしましょう。明朝、あなたが知りたいことを説き明かしてから、お見送りします。 三日前に消えたろばのことは心配いりません。もう見つかっています。今やイスラエルの富はすべて、あなたの手にあるのです。」 「何と言われます。私はイスラエルの中でも最も小さいベニヤミン族の者で、私の家は、その中でも取るに足りない存在です。どうしてそのようなことを。」